トップページ山行リスト(日付)>マスキ嵐沢_記録20120715


マスキ嵐沢

 山行日
2012年7月15日(日)       曇り           同行者:NASさん
 コース
大滝橋(8:55)〜(9:40)マスキ嵐沢入渓点(10:06)〜(10:35)F1〜(10:57)F3〜(11:18)F5〜(11:33)ナメ入口(11:50)〜(12:41)F7上(13:39)〜(13:58)稜線〜(14:46)ベンチ(14:49)〜(15:26)西丹沢自然教室
 今回は、西丹沢で沢登りを楽しんできました。
 パートナーは、高校時代の友人、NASさんです。今まで彼とは、中央線沿線の山々を歩いてきたのですが、今の時季、中央線沿線は、さすがに暑いので別の山域か、山の楽しみ方を変えようということになり、今回は、沢登りとなりました。
 詳細は、以下をご覧下さい。


 NASさんは、学生時代、探検部に属し、登山、カヌーやケイビング(洞窟探検)など、幅広くアウトドアを楽しんでいたそうだ。(本人談)
 ....でもケイビングは、怖くて、一回で懲りたらしい。
 よくよく聞くと、丹沢の沢も2回ぐらい、行った事があるとの由。
 どこの沢を行ったのかと尋ねると、沢の名前は、もう忘れてしまった。ただ覚えているのは、2つとも、玄倉から入ったということ、そのうちの1つは、滝の途中でのトラバースで滑って落ちた(但し、ロープ有り)記憶があるというものだった。
 いったいどこの沢だろう。ちょっと気になっていた。
 すると先日、
 「玄倉から入った沢の1つがわかったぞ。滑って落ちた沢でない方は、同角沢だ。」
 というメールをもらった。
 最後の大滝(遺言棚)も登ったことを思い出したとの事。
 ....さすが探検部。
 そんなNASさんであれば、約30年ぶりの沢登りでも大丈夫だろうと思ったが、いきなり本番は、どうかと思い、二人で都内のインドアクライミングに行き、エイト環、ATCなどで確保の練習などをしてきた。
 今日は、いよいよ、その実践である。

 今回は、NASさんに車を出してもらい、谷峨駅で待ち合わせ。
 御殿場線から降りたら、既にNASさんが待っていた。
 清水橋の丁字路を右折し、河内川沿いに進むと、川の色が茶色と完璧に濁っている。
 これは、ちょっと沢は、危ないかなと思っていたが、丹沢湖を越えると、河内川(中川川)は、濁っていなかった。
 これなら、いけるんじゃないかなと少々安心。

 8:20、西丹沢自然教室の駐車エリアに車を置き、地図を広げて今日のコースの確認をする。やがて、西丹沢行きのバスがやってきた。3連休ということで、バスは2台出ていた。
 8:45、折り返し、新松田駅行きとなるバスに乗車。
[西丹沢自然教室前にて]

 8:53、大滝橋バス停にて下車。
 車を西丹沢自然教室に置き、バスで大滝橋に向かうという、このアプローチの仕方は、キリヤマ隊長のマスキ嵐沢遡行を参考にした。
 ....キリヤマ隊長、ありがとうございます。
 8:55、バス停を出発。対岸のキャンプ場には、多くの大型テントが目立つ。さすがは3連休だ。普段、見たことのないような混雑振りだ。
 だが、上空は、曇り空で、ちょっとこれからの天気が気にかかる。
[大滝橋にてバスを下車]

 山道に入り、左の大滝沢の大滝を見下ろす。
 高さ10mぐらいの滝だが、水量がいつもより多く、そのせいか、水が落ちる音に迫力がある。
 「う〜む。やはり、今日は、水量が多いな〜」
と、この先の目的地マスキ嵐沢が気になってきた。
[大滝の水量が普通ではない]

 山道の橋が半分、流されていた。
 途中で、木橋からJUMPして、対岸に渡る。
 それにしても、水の流れが、恐ろしく速い。
[木橋が半分流されていた]

 9:40、マスキ嵐沢入渓点に到着。
 ここで、沢靴に履き替えたり、ハーネスなどを装着し、沢登り姿となる。
 NASさんは、今回のために沢靴や、ヘルメット、ロープ等を新たに準備した。
 NASさん曰く、「結局、ハーネスも買ってしまった。」
 山の専門店で、ハーネスは、30年前のものを持っていると話したら、さすがに店員から
 「それを使うのは、止めた方がいい。」
と忠告されたらしい。
[入溪地点にて]

 10:06、沢に入る。
 先頭は、NASさん。二人ともこの沢は、初めてだったが、このマスキ嵐沢の情報は、ネットをはじめ、いろいろと集めることができた。そんな遡行メモを持参しての出発である。
[いよいよスタート]

 NASさんは、最初、沢靴の調子を見ていたのだが、それが済むと、山道と同じような感じで、スイスイと進んでいく。
 特に滝が現れると、下でちょっと立止まり、ルートを確認した後、両手両足を使って、リズムよく登っていく。
 やはり、沢登りも慣れた感じである。
[最初の滝]

 前方の視界が広がり、沢が左にカーブしている箇所に出た。
 このあたりで、用意していた沢の遡行メモと見比べてみたが、いったい自分がどこにいるのか、わからなくなってきた。
 4m以下の滝は、実際のところ、高さが曖昧で、通過したか否か、判断がつかないのだ。
[2番目の滝?]

 ここが、ナメ?と思いつつ、遡行する。
 だが、倒木が多く、せっかくの美観が荒れた光景になっていた。
 ここがナメだとすると、遡行メモから見て、すでに4m滝を2つ越えていることになる。
 まあ、このナメが終わり、F1が現れてくれれば、現在位置がわかると思い、とにかく進んでいく。
[ナメになる]

 気持ちのいいナメが現れた。
 だが、水の流れに勢いがあり、ちょっと癒しのナメという感じはしない。
 NASさんは、水流の中に入らず、左端を進んでいく。

 このナメが終わると、前方に結構、高さのある滝が見えてきた。落ち口に大きな岩が見える。どうやらF1のようだ。
 ようやく自分の位置がわかった。
[気持ちのいいナメ歩き]

 F1下に到着。
 事前に用意した遡行メモでは、左から登り、途中で水流を渡り、右側を登るとある。大岩の下で、右側に渡るようだ。だが、先頭を行くNASさんは、左から登り、そのまま左を直登するコースにトライ。
 岩が濡れているので、滑りそうである。果たしてクリアできるのか。
 だが、強引に両腕のパワーだけで岩の上に上がってしまった。

 う〜む。この姿を見て、思わず35年以上も前の光景が目に浮かんだ。高校の体育の授業で、体操競技の吊り輪があったのだが、吊り輪にぶら下がった後、上半身を吊り輪の上に持ち上げ、両足を前に水平に伸ばせたのは、NASさんだけではなかったかと思う。半端でない腕力なのだ。
 いまだそのパワーは、健在のようだ。
[F1(8m)を強引に左から登る]

続いて、この花立小僧も左からの直登にトライ。中段まで登った後、最後の岩を登ろうとすると、NASさんから、
 「せっかくロープを持ってきたのだから、練習しよう。」
ということで、ここからフォローで登ることになった。
 両腕だけでは、簡単に岩の上に上がれず、膝などを利用して何とかクリア。
 やはり、ロープがあれば、安心感が違う。NASさんは、落ち口からだいぶ先の岩の上で確保していた。自己確保のための支点を木に取りたかったようだ。

 続いてF2が現れる。先頭のNASさん、水流沿いが登りやすいと伝えたのに、何故か右端から登っている。
 「足が滑る〜」
と言いながら、登っていった。
 続いて花立小僧。遡行メモ通りに倒木の左を登り、倒木の先頭で水流に入る。水の勢いはあるものの、ホールドがあり、安心して登っていけた。
 ....だが、だいぶ濡れてしまった。
 登り終えた後、NASさんになんで右端から取り付いたのか尋ねると、
 「濡れるのが嫌なんだ。」
と予想外の回答が返ってきた。
 それで、先ほどのF1も左を強引に登った理由がわかった。どうやらズボンが濡れるのが嫌いらしい。
 ....こういう人を他にも知っているので、別段、驚くことなかった。
[F2:トイ状滝(5m)は、水流沿いが登りやすいのだが]

 F2を登り終えて、2、3分後、F3が見えてきた。
 この2段の滝は、ネットによく写真がアップされているので、滝の形は知っていた。おかげで、今日は、本当に水量が多いことを認識した。
 ここは、遡行メモ通り、右から下段滝の左上に登り、上段滝の右上を目指す。
[F3(3+12m)に到着]

 さすがにここは、NASさん、濡れながら上段滝を右上に上がる。
 その後、水流に近づくように水平に進み、水流手前で、もう一段、上に上がる。これで、落ち口に近づける。
 NASさんが、残置リングを右寄りの落ち口の上にて発見。これは、使えそうだと、リングの強度を確認した後、長めのスリングを引っ掛け、確保した後、持ち前の腕力で落ち口の岩の上へと登ってしまった。
 花立小僧は、右端へと進み、最後は、右上にあった木の根っこに手が届いたので、それを掴んで落ち口に上がった。 
[左から沢を横切り、右上に向かう]

 続いてF4。
 これも水流右から取り付く。相変わらず、NASさんは、水流から離れたルートをとっている。
 ここは、ホールドが多そうだ。NASさんは、さっさと登ってしまった。
[F4(7m)は、右から]

 続いてF5。
 この辺りは、滝が続き、ワクワクする。この沢が、西丹沢初級コースで人気が高いのも頷ける。
 ....それほど初級とは思わないけど。

 ここもさっきのF4と同様、水流右側を登っていく。
[F5(8m)も右から]

 F5を登りきると、傾斜が緩くなり、倒木だらけの沢となる。
 昨今の豪雨で、倒木が目立つ。強風で折れたというのではなく、根元の土が水分を含んで脆くなり、根こそぎ倒れているのだ。倒れても、まだしっかりと緑の葉をつけているのを見るのは、ちょっと痛々しい。
 障害物競走のような感じで、倒木の幹の下を潜り込んだりしながら、上流に向かう。 
[倒木が邪魔になる]

 小さな2段の滝を登る。
 これが、遡行メモ上の4m滝かなと思いつつ、右側から快適に越えていく。

 このあたりは、自然林の緑が鮮やかで、見ていて気持ちいい。だが、晴れていたらもっと印象がいいだろうなと思った。
 NASさんも、「ここは木々が美しい。」と感心していた。
[小滝を登る]

 小滝を登ると、視界が広がり、ナメとなった。
 倒木が少なく、癒しの光景となった。
 「ここで小休止しよう。」
と岩の上に腰を下ろす。(11:33)
 NASさんは、ここで軽く食事。

 すると、男女1組のパーティが追い越していった。そういえば、入渓する時も、先行のパーティがあり、そのパーティも男女1組だった。だが、2組とも沢には、慣れた歩き方で、初心者ではないのが分かった。
 上空は、相変わらず雲が厚い。いつ雨が降ってきてもおかしくない状況だが、まだ天気は、もっている。
 11:50、出発する。
[ナメが広がり、ここで小休止]

 11:58、二俣に到着。
 ここも倒木が多い。注意してみないと、二俣だとわからない。
 左の沢に進む。水量は、だいぶ減っていた。 
[最初の二俣:左へ進む]

 正面奥に植林が見えてきて、前方が二俣になっているのがわかった。
 遡行メモによれば、2番目の二俣だ。
 ここは、右手に進む。(12:10)
 岩の上にケルンを見る。

 この二俣から2、3分後で沢の水が涸れた。
 浮石の多い涸沢となり、ちょっと歩きにくい。 
[2番目の二俣:右に進む(岩の上に小さなケルンあり)]

 「あれっ!」
 思わず、コケそうになった。左足の渓流シューズのフェルトが剥がれてしまったのだ。
 幸い、沢は涸れていたので、ここで靴を履き替えることにした。

 すぐ先が、3番目の二俣だった。すぐ先に涸滝のF6が見える。遡行メモがなければ、あっさり左の沢(こちらの方が本流に見える)を進んでしまいそうな分岐点だ。
[3番目の二俣:F6(5m)が正面に見えた]

 F6は、事前情報通り、階段状で登りやすいが、それでも岩が脆そうなので、慎重に登っていく。
 ....どうも丹沢の岩は、信用できないのだ。

 そのすぐ先にF7が現れた。
 NASさんが取り付くが、ハング状になっていたので、すぐに諦める。右の巻道に入るが、これが不安定で恐ろしい。岩は脆く、土は、軟らかいので、滑りやすい。
 特に落ち口にトラバースする最後の一歩に緊張感が走った。
[F7(2段10m):右の巻道を利用]

 NASさんが、F7の落ち口に残置リングなどが3箇所あることを発見。(12:41)
 「せっかくだから、ここで懸垂下降の練習でもしよう。」
とロープを取り出す。
 念には念を入れ、3点以外からも木の幹を支点に使い、準備OK。
 NASさんは、約30年ぶりの懸垂下降の筈だが、エイト環使用で、スルスルと降りていった。

 こちらもせっかくなので、木の幹を利用して自己確保し、NASさんが登り返す際の確保を練習する。
 「張って〜」
 ここは、涸沢なので、沢の音もせず、声もよく通る。

 やがて、NASさんの顔が岩の間から見えた。だが、この後、落ち口に上がるのが一番のネックだった。
 無事、登り終えてNASさん曰く、
 「いや〜満足。満足。」
 すっかり、カンを取り戻したようだ。
[F7の上に支点3箇所を発見] [NASさん懸垂下降で滝下へ]

 F7で、たっぷり遊んでしまい、時間を費やしてしまった。
 13:39、出発。
 この先に4番目の二俣があるのだが、現れてくるガレ沢が二俣の対象なのか、よくわからず、どこが二俣?という状況に陥る。ここは、適当にメインとなる涸沢を進めばいいだろうと判断。

 13:47、前方に三俣?が現れる。(写真下)
 「ここが、三俣?」
 遡行メモでは、真ん中の沢を進むようになっているが、真ん中は、傾斜がキツそうなのと、本当にここが三俣かどうか分からなかったので、主流と見える左側のガレ沢を登っていく。
[浮石の多い涸沢を行く]

 前方に尾根が見えてきた。
 白ザレの源頭部分を登っていくが、ズルズルと足元が崩れていく。最後は、登りやすい左の尾根に向かった。
[ルートが分からず、強引に登っていく]

 13:58、尾根筋に上がった。
 振り返って、登ってきたルートを二人して眺め入った。(写真下)

 ここは、まだ権現山への稜線手前の枝尾根だと思い、右手の登り斜面に進もうと、足を踏み出した瞬間、
 「あれっ、この光景は、見たことがある。」
と、すぐに立止まる。
 既に権現山の稜線だったのだ。前方の見覚えある尾根筋は、権現山ピークに向かうものだ。
 「NASさん。山頂に行く?」
と尋ねると、
 「パス」
との返事。ということで、180度、ターンし、反対方向を進む。西沢に下るルートは、左折だったからだ。
[尾根の背筋に出た(登ってきたルートを見下ろす]

 以前、権現山への登山道だった経路を下っていく。
 途中、背後から5人の男性パーティに追い越された。聞けば、マスキ嵐沢だと言う。どうやら、我々よりも先に遡行し、権現山のピークで休憩されていたようだ。

 14:46、西沢に出た。ベンチにて小休止。
 ペットボトル2本を持参したが、ここで2本目もカラにした。後は、登山道を西沢沿いに下っていくだけだ。
[西沢に下ってきた]

 15:26、吊橋を渡り、西丹沢自然教室に到着。
 この後、中川温泉の「ぶなの湯」に寄り道するが、駐車場満杯で入れず、諦めて山北駅裏の「さくらの湯」に向かう。
 無事、入れたものの、こんなに混雑していたのは、初めての経験だった。
[再び西丹沢自然教室に戻る]


  どうにか、天気は持ちこたえ、無事、西丹沢自然教室に戻ってこれました。
 今回、振り返ってみて、マスキ嵐沢が人気のある沢だというのが、よくわかりました。
 沢登りというのは、水流があるうちは、楽しいのですが、水が涸れてくると、急斜面になり、ヤブが現れ、最終段階で、ものすごいエネルギーを消費するという先入観があります。ですが、ここは、最後のツメに、ヤブはないし、急斜面もありませんでした。
 同行のNASさんも非常に楽しかったと、今回の沢登りは、お互い満足のいくものとなりました。
 また、沢にチャレンジしたいと思っております。 



※山行時間には、撮影時間を含んでおりますので、ご注意下さい。