トップページ山行リスト(日付)>小川谷廊下_記録20120825


小川谷廊下

 山行日
2012年8月25日(土)       快晴       同行者:NASさん
 コース
玄倉林道ゲート(9:02)〜(9:10)仲ノ沢林道分岐〜<仲ノ沢林道>〜(9:44)穴ノ平橋手前(10:07)〜(10:14)穴ノ平沢合流点〜<小川谷廊下>〜(14:36)東沢合流点(14:54)〜<中ノ沢経路>〜(15:55)穴ノ平橋手前駐車場(16:00)〜<仲ノ沢林道>〜(16:32)仲ノ沢林道分岐〜(16:42)玄倉林道ゲート
 暑い日々が続く中、小川谷廊下に行ってきました。同行者は、いつものNASさんです。
 さすがに人気のある沢ということで、多くの遡行者で賑わっていました。結構、ドキッとしたこともあり、なかなか印象深い沢登りとなりました。
 詳細は、以下をご覧下さい。

注意)
 インターネットや文献において、滝のFNoのつけ方がマチマチですが、ここでは、「丹沢の谷110ルート」丹沢渓谷調査団(山と渓谷社:1995年)に準じたFNoを採用しています。


 今回も、NASさんの車で出発。
 このところ、全く雨が降らず、好天気が続いている。東名高速から眺めた富士山の姿を見ると、今日も天気が良さそうだ。

 渋滞なしで、大井松田ICからR246に入る。
 山北のコンビニで小休止した後、玄倉に向かう。
[正面に富士山(東名高速)]

 玄倉林道に入る。
 「懐かしい。約30年ぶりだなぁ。」
 NASさんは、当時の思い出に浸っているようだ。

 ちょうど西丹沢行きのバスが到着した後だったようだ。玄倉林道を歩いていく登山者を何人か見かける。

 小川谷に続く仲ノ沢林道の分岐路に着いたら、クサリが張ってあり、仲ノ沢仲ノ沢林道は、進入禁止となっていた。そんな訳で、右に進み、玄倉林道ゲート前の駐車場に車を止めた。
 沢装備をザックに入れて、出発。(9:02) 
[玄倉林道ゲート前にて駐車]

 仲ノ沢林道を歩くが、日陰部分が少なく、汗をダラダラ流しながら、ようやく穴ノ平橋手前200m地点に到着。この日陰で沢登りの準備を行う。
 すると、下からパトカー1台と、警察関係の車両が1台、目の前を通り過ぎていった。登山パトロールで入ってきたのかなと、その時は、思った。

 しばらくすると、沢装備姿の7、8人のパーティが下りてきた。よく見ると、先ほどのパトカーの人たちだ。今日は、山岳救助隊のトレーニングのようで同じ小川谷に行かれるようだ。
 挨拶後、「今日は、小川谷から東沢乗越の方に行かれますか」との質問を受ける。
 「いいえ、そのまま中ノ沢経路を下って、来た道を引き返します」と返事すると、その回答に満足だったのか、ニッコリして、「そうですか。では、お気をつけて」と、林道を下っていった。
[仲ノ沢林道で沢装備]

 沢登り姿になって、出発する。(10:07)
 先ほどの山岳救助隊の姿が消えた植林帯に向かう。ここは、ヒルが出るというので、足早に過ぎる。踏み跡を辿っていくと、急斜面となるが、固定ロープが張ってあった。有り難くロープを使用させてもらい、沢に下っていく。

 沢に下り立ったところで、一応ヤマビルチェック。
 ヒルが出現すると言われていた植林帯だったが、連日の晴れで、ヒルも出て来れないのだろう。一匹も見ることはなかった。
[植林帯を下っていく]

 ゴーロを歩くが、暑い。日陰がないのだ。
 コガイ平沢(穴ノ平沢)が左から合流してくる。
 その沢を渡り、先を進んでいくと、前方に小さな滝があり、そこからは日陰になっていた。
 小川谷入口の滝(3mぐらい)だ。
 水量は、少ないが、勢いがあった。
 よく見ると、先ほどの山岳救助隊のパーティが一人ずつ、滝の右側を登っていた。
[小川谷廊下の入口の滝が見えてきた]

 最初の滝は、水流右の岩壁を登る。
 滝下で見上げると、水流部分は低いが、岩壁の方は、結構、高さがある。
 だが、次々とホールドが見つかり、リズムよく登っていけた。
[最初の滝]

 すぐ先に大石が目に入る。F1だ。
 先行の山岳救助隊パーティが大石の右側を登攀中で、いきなり順番待ちとなった。7、8分待った後、いよいよ我々の順番となった。水はチョロチョロ程度の流れで、残置シュリンゲがアブミ状にぶら下がっている。そこに足を入れて、まずNASさんがチャレンジ。ショルダーでは、届かないので、NASさんの足を掌でプッシュして支援。その後、自分の番の時は、上のNASさんからロープを出してもらう。だが、簡単に上がれない。
 ....はっきり言って、メタボのせい。

 どうもシュリンゲの最上段の足が右足だったのがいけなかったようだ。左足を上げても、ツルツルの岩で引っ掛からない。
 両手でツルツルの岩をあちこち触れていたら、右手の指3本の爪だけが、引っ掛かるような僅かな凹みをキャッチ。結果的にその僅かな凹みのおかげで、上半身を引き上げることができた。
[難関のF1]

 F1を攀じった後、人の背よりも高い岩に囲まれる。
 その岩のてっぺんを登り、NASさんは、沢に下りていった。私は、岩に登らず、手を抜いて、その岩を両手で抱えるようにして時計回りに方向転換し、進もうと考えた。だが、実際に回ろうとしたら、足元が見えず、両足が浮いてしまった。しょうがないので、元に戻ろうとしたら、両手で抱えていた岩との摩擦力が弱まり、両手がズルズルと滑り出した。
 わっ!落ちる〜と叫んだ後、3秒ぐらいして...落ちた。

 だが、下は、F1の落ち口に通じる水流のある平らな岩だった事を知っていたので、それほど恐怖感は、なかった。(まあ、足の先から30cmぐらいの落下だろうと思った)
 但し、着地に失敗して流されると危険と一瞬、思ったが、無事コケることなく、両足で着地できた。
 ....でも両手が滑っていた3秒間の緊張感は、最高レベルに達したのだ。
[F1の登ってきた側の落ち口(振り返って撮影)]

 続いてF2が現れる。
 白い岩壁が太陽に照らされ、眩しいぐらいである。
 NASさん、最初は、水流傍の左側をチャレンジするが、すぐに諦め、水流左奥の方から登っていく。
[F2は、水流左奥から]

 F3に到着。ここは、また綺麗な滝だなぁというのが第一印象。
 白い岩壁というのが、なんともいい。

 左手前の岩壁を登るが、結構、立っている。最初、左斜めに登っていくが、途中で、方向転換するため、上半身を右側に向けようと、右足を開こうとしたとき、足場が狭く、結構、しんどかった。
. ....一瞬、右足の脹脛が攣りそうになった。

 また、最後のステップに上がろうとすると、これまたF1のようにツルツルで両手での確保が怪しかったので、NASさんにお助けロープを出してもらう。
. ....やはり、岩登りは、メタボには辛い。
[F3:左の岩壁を登る]

 大きな岩が見えてきた。F4だ。
 インターネットで、10年以上も前のF4画像を見たら、大岩の左右は、同等ぐらいの水が流れていた。だが、今は、左しか流れていない。
 大岩の右側を越えていく。そんな訳で、あまり滝を越えていくと言う感じではなかった。

 この後、しばらくゴーロが続いた。
[F4は、大岩の右から]

 F5は、水流左を登る。
 ここは、あっさりと登っていけた。以前は、もっと高い滝だったようだが、今は、たいした落差ではない。
[F5は、水流左から登る]

 両岸が切り立ってきた。
 そのゴルジュを進んでいくとF6が現れる。左岸の岩壁にシュリンゲのような物がぶら下がっていたが、ちょっと無理だろう。
 右手(左岸)の斜面から巻くが、先行の山岳救助隊パーティがロープを出しているようで、ここでも順番待ちとなった。
 20分ぐらい待って、いよいよ順番が来た。
[F6で、順番待ちとなった]

 前のパーティと同様、ロープを張った。
 ここは、F6落ち口を見下ろすようにトラバースするのだが、左下を見ると、高度差があり、結構、緊張する。でも、残置シュリンゲがあり、それを掴んで、最初の下りの一歩が出せれば、その後は、ロープなしでも怖くはない。
 でも、このシュリンゲを掴んだ瞬間、切れたらと思うと、ちょっと恐ろしい。
[F6左岸からの巻きで我々もロープを出した]

 F7は、左からも登れるようだが、右からでも簡単に登れた。

 小滝を含めると、いったいいくつの滝を越えたのだろうか。滝だらけで全く飽きない。また、この沢の特徴は、沢の分岐が、はっきりしていることだ。沢の進路を間違えるような箇所は、ここまで全く出てこない。それゆえ、進路で迷うことがないのがいい。
[[F7:右から小さく巻く]

 やがて、前方に大岩が見えてきた。
 これだ。これだ。小川谷名物の、この岩が見たかったのだ。
 近づいてみると、思っていた以上に斜度がある。
 今回は、大岩の中央にロープが設置してあり、これを利用して登っていく。

 ロープを掴んで、岩に足を乗せると、砂が多く滑りやすい。これは、登山者の靴から落ちた砂かなと思う。そのうち、砂がなくなり、ロープ頼りで登っていくが、これが意外にも疲れる。殆ど両腕の力だけで登っているためだ。
 岩の上に立ったときは、息が荒かった。
 すぐに上流側に下りるのが惜しくて、振り返ってしばし大岩の斜面を眺め入った。 
[大岩を残置ロープで登るNASさん]

 先行パーティに追いついた。山岳救助隊パーティが休憩後、ちょうど出発するところだった。先に行きますかと尋ねられたが、我々もここで休憩することにした。(写真下左)
 時刻は、12:14。ランチタイムにはちょうどよい。

 対岸の左岸には、何やら動物の顔のようなユーモラスな岩あり。(写真下右)
[先行パーティを見送る] [ ]

 ナメの後、ゴルジュに突入する。今日は、それほど水量が多くないので、水圧は、それほどでもない。だが、腰まで浸かってしまい、急に体温が下がる思いだ。

 結構、狭くなるな〜と進んでいくと、前方では、勢いよく水が落ちていた。
 F8だ。(写真下左)
 ここは、水流沿い右を登るが、水量が少なくても、完全にシャワークライミングだった。下から見上げたときは、ツルツルの岩壁かと思ったが、そこそこホールド、スタンスがあったので、3点支持で登っていけた。

 ゴルジュが続く。だが、その狭いエリアにも日が差し込んできた。ちょうど左の岩壁が滝になっていた。大コバ沢の出合いだ。落ちてくる水量が少なかったが、デジカメを取り出す。だが、コントラストが強すぎ、全く写真にならなかった。

 まだまだゴルジュが続く。
 続いてF9が現れる。真下に落ちる滝だ。(写真下右)
 これも水量が少ないものの、迫力のある滝だ。デジカメを取り出す。今回のデジカメは、防水タイプのPENTAXを持ってきた。それゆえ、水には強いのだが、普段あまり使用していないので、露出補正などの操作に慣れない。
 ....よく使う機能を十字キーに登録しているのだが、操作をすぐ忘れてしまう。

 滝本体は、完全に日陰になってしまい、奥の緑には、日が当たっており、コントラストが強い。
 これまた撮影屋泣かせの滝だった。左から巻いていく。

 【注意】
 「丹沢の谷110ルート」丹沢渓谷調査団(山と渓谷社:1995年)の遡行図では、大コバ沢出合い通過後にF8があるが、現実に合わせて、ここでは、上記の滝をF8とした。
[F8:水流右沿いを登る] [F9:左から巻く]

 小川谷のシンボル、石棚が見えてきた。
 見れば、左の岩壁に先行パーティがロープを出して一人ずつ、登っていくところだった。
 ということで、これまた順番待ちとなった。

 待っている間、手前の小滝を登り、石棚を撮影する。
 2段の滝のところだけ、ちょうど日が当たり、明るくなっていた。なかなかいいアングルが見つからず、滝下をウロチョロし、何枚も撮影してしまった。

 その後、後続パーティが現れた。結構な人数だ。5、6人は、いるようだ。
 30分待った後、我々の番になった。
 先行の山岳救助隊と同様、一応、ロープを取り出す。リードは、NASさん。
 その後、フォローで登るが、ホールド、スタンスは、すぐに見つかり、それほど恐怖感は、ない。
 でも、掴む岩が全く信用できず、ヌンチャクを回収しながら、慎重に登っていく。
[F10(石棚)にて後続パーティが現れた]

 石棚を巻いた後もゴルジュが続いたが、幅は、だいぶ広がった。
 ナメがあったりと、穏やかな沢となり、歩きやすい。
 途中、小滝が出てきたが、左から簡単にクリアしていく。
[小滝を左から]

 再びゴルジュになった。
 濡れるのが嫌いというNASさんも、結構、水に入り込んで進んでいる。こういうゴルジュ歩きを楽しんでいるようだ。
[ゴルジュを突破]

 F11が見えてきた。大岩が落ち口にあり、独特の姿を見せている。ここは、水流からだいぶ離れた左の岩場を登っていく。
 F11を越えると、ゴーロ歩きとなる。

 14:16、左から沢が合流していた。
 水流がよく見えなかったので、どちらが本流かと、今回初めて迷ったが、左手の沢の奥に堰堤が見えたので、これは違うとわかり、直進していく。
[F11:左手前の岩場を登る]

 再びゴルジュとなった。
 ここは、ツッパリを楽しむ。
 だが、このゴルジュは、すぐに終わってしまった。 
[再びゴルジュを通過]

 最後の滝であるF12が現れた。
 その滝の上に目を移すと、奥に壊れた堰堤の一部が見える。

 NASさんは、直登できるかと滝下まで向かうが、もう濡れるのが嫌になったようで、すぐに方向転換し、左の巻き道を選択。この巻き道は、滝を越えた後の下りにて少々緊張するが、残置ロープがあった。だが、これに頼るのも怖いので、片手で掴む程度での使用にとどめた。
[F12は、左の巻き道ルートで通過]

 左半分が壊れた堰堤を通り抜けると、一面ゴーロとなった。
 これで小川谷廊下は、終了だ。
 NASさんと、遡行完了の握手をして祝う。
[壊れた堰堤を越えると、ゴーロとなった]

 14:36、東沢合流点の堰堤下にて小休止。ここで、沢装備を解き、渓流シューズからトレランシューズに履き替えた。時々、吹いてくる沢からの風が顔に当たり、心地よい。
 14:54、中ノ沢経路に向かって出発する。
[東沢合流点にて沢装備を解く]

 植林帯を息を切らしながら、速いペースで登っていく。このあたりでもヤマビルがいるかなと思ったからだ。経路に出たところで、ヒルチェックしたが、特に発見できなかった。

 その先で、崩壊地を通過するが、以前と違って、全てにわたり、ロープが用意されてあった。前回(2011-11-12)通ったときは、最初の崩壊地でロープが切れており、ロープなしで、ドキドキしながらトラバースしたが、今回は、安心して通過できた。
[中ノ沢経路に出る]

 その後、こんな崩壊地があったかなと思うところを通過。(写真下)
 一応、トラロープが張ってあった。なお、M−Kさんが、この場所を今年8月5日に通過されているが、そのときには、このロープはなかったようだ。
[中ノ沢経路で、新たな崩壊地]

 樹林が風雨のために根こそぎ倒れていたりして、中ノ沢経路もだいぶ崩壊が進んでいた。特に沢を横切るあたりが酷い。
 15:55、仲ノ沢林道の駐車場スペースに到着。(写真下)
 午前中に駐車してあったと思われるパトカーは、すでに姿を消していた。ここで最終のヒルチェックをするが、やはり、一匹も見つからなかった。

 この後は、一気に舗装路の仲ノ沢林道を下り、玄倉林道ゲートまで歩いていく。
 NASさん、お疲れ様でした。
 [仲ノ沢林道の駐車場スペースにて小休止]


 夏の暑い盛りに小川谷廊下というのは、ベストマッチというのが、よくわかりました。
 小川谷廊下だけの遡行でしたら、
  ・滝は、数多く出てくる。
  ・ルートで迷うようなことは、まずない。 
  ・最後のツメがないので、高度差が少なく、またヤブ漕ぎもなく、体力的に楽。
  ・岩が白く、沢が明るく感じられる。
  ・遡行時間も適度
と、かなり長所の多い沢で、人気があるのも頷けます。但し、水量が多く、水圧が強い時は、要注意だと思いました。

 今回は、最初のF1がなかなか登れず、いきなり第1ラウンド開始早々で撤退かと、一瞬、思ってしまいました。また、その後、大岩を抱きかかえた後、まさか落下するとは思いませんでした。
 そんな訳で、いきなり先制パンチを2度受けたような気分でしたが、その後は、順調にクリアすることができました。
 楽しみにしていましたツルツルの大岩もロープが設置されてあったおかげで登れましたし、石棚も待ち時間がありましたので、ゆっくり見物することが出来ました。

 またシーズンになりましたら、訪れてみたいと思います。




※山行時間には、撮影時間を含んでおりますので、ご注意下さい。